01Blog / 地域のプレゼン(ピッチ)で思うこと

2017.09.17

01Boosterはメインが地域ではありませんが、地域にも優秀なスタートアップや人材、特に優良な中小企業、大学が多数存在するので、その文脈で地域に週末を中心に出かけております。現象的には、現在、運用しているアクセラレーターの応募は80%が関東に集中(宣伝が悪い部分もあるでしょうが)。これは地域には良いスタートアップがいないというのではなく、大量にいて、覚醒を待っていると考えるのが順当です。

さて、その時の課題がプレゼン(ピッチ)です。当然ながら機会も少なかったり、初心者だったりするので仕方がない部分もあると思いつつ、非常に短い時間で運命が動く可能性もありますので、ここに今までに地域で聞いたピッチ(年間で数百)をベースに地域のプレゼンの課題をまとめておきます。

地域の癖を知る

日本や地域の課題となる点を最初に知っておくのは良いかと思えます。まず、日本は地域や産業でコミュニティが閉じる傾向があります。この結果、そのコミュニティ内の「軸」と「共通言語・文脈」が精鋭化するため、コミュニティ内でのコミュニケーションコストが凄く低くなります。これは、地域でのビジネスには良いですが、文脈の無い、他地域、海外ではどうか?

これを、わかりやすく言えば、地名です。私は千葉市みつわ台に住んでましたが「みつわ台」と言われて文脈がある人は相当少ないでしょう。但し。そこの住民で話していると・・ですね。なので、相当文脈なしの相手に話すことを意識する必要があります。例えば「人口減少」などはどこの地域でも見られるので、なになに地域の人口減少が課題で!と言われても、それは他に比べてどうなのか?という気分になります。

つまり、地域での共通認識だとしても、地域個別の話をされても相手は分からないし、他と比較するし、共感しないのです。

前提を変えたい・疑いたい

衰退するものを素晴らしいとは言いにくいのは分かります。ので、少し話題を変えて、例えば私はシングルファザーです。今でこそそうでもないんですが、昔は、それだけで「可哀想な人」とレッテルを貼られてしまいました。これも少し日本的です(場の共通意識が強い)。でも、実際に全然違ったりするわけです。なので、一見、皆が「ネガティブ」に取るものを、「ネガティブ」のままではなく、なぜ、別の角度から見れないのか?と思います。

地域の社会課題よりも事業機会で話せないか

まず、声を大にして言いたいのは東京と比較することはいいんですが、東京と比較して劣っているという考え方は止めてはどうかと思います。「5年ぶり以上のイノベーティブ上海で感じたこと」に書いたとおり、先進事例であれば中国の方がだいぶ進んでいます。細かいところは日本は得意ですが、全体構想はそこでまででもないです。ですから、東京とくらべている時点で先端系では既に世界から遅れを取っている可能性があります。

なので、比較自体はいいですが、衰退をなんとか、という東京(東京だって辛い!)に比べて「ネガティブ」面ではなく、客観的に自地域の優位性を考え「事業機会」として捉えられないのか?ということです。「藤野英人氏が語る、地方創生において重要な「遊び場・学び場・働き場」と「3種の虎」とは」は秀逸ですので是非ご一読願いたい。

IT系のサービス産業は確かに東京が有利な点もあります。では、それ以外で東京初の大型事業はそこまでありますか?と。となると、地域は地縁を使った大型モデルが頻出していると思います。

天才とは、その人だけに見える新事実を、見ることのできる人ではない。誰もが見ていながらも重要性に気づかなかった旧事実に、気づく人のことである。by 塩野七生

なので、ネガティブな社会課題をなんとかしたい、というのではなく、事業機会としてポジティブに捉えたらどうなるか?です。例えば、ある若者がいて、その人に衰退しているのでなんとかせねば!と言って燃える地域の愛の強い人も多いかも知れません。一方で事業機会型で話されたらどうですかね?その方が残るか、来るのではないでしょうか。

何故、それをここでやったら勝てるのか?

上の話の逆説として、例えば、スマホのアプリの開発をしたとします。では、それを何故地域でやるのか?です。仮に世界を狙っているのであれば、何故、それを日本でやるのか?です。

例えば、地域ならではのフレキシブルな勤務形態を達成できるとか、地元の専門学校と連携して、地縁があって、開発チームを抱えられる、営業は東京とかの都会で取れるとか・・

それって、東京でやった方が勝てないか?と思えるものではなく、なるほど、それは・・

誰でもない「あなた(またはあなたのチーム)」が、他にはない「ここ」で、いつでもない「いま」やるべきだ

と思えるような話です。この要素は欲しいです。いやいや、それは。。と思ったとしても、強みは当たり前すぎて見えないことが多いのです。本当にここでやる理由はたまたま(だったとしても!)なのでしょうか?

自分の話をするように心がける

これは何故なのか?ですが、例えば、5分のピッチ(短いという人もいますが、3分ぐらいで随分話せるはずです)で、4分ぐらいを「私がその気になってネットで調べれば分かること」を話しているケースがあります。これは非常に勿体無い。。

  • で?実績は?
  • どうやって広げるのか?他社に勝てるのか?
  • 何故、強いのか?何故、それをするのか?
  • なんで、ここでやるのか?
  • (時にビジネスモデルよりも重要な!)チームは誰なのか?

などの話が無いケースが多いです。

サービスの話をするよりも、ビジネスモデルの話を

Wikiにビジネスモデルに関して下記の記載があります。

ビジネスモデル(business model)とは、利益を生み出す製品やサービスに関する事業戦略と収益構造を示す用語である。

仮に、聴衆がその製品やサービスの直接の顧客だったらそれもOKですが、これも勿体無いのは、製品やサービスの宣伝に終わってしまっている点です。ここでは、上記の文面の本当に一部(製品やサービス)の話をしています。どうやって儲けるのか?どうやって広げるのか?なぜ勝てるのか?が場合にもよりますが、本来は相手の聞きたいことだと思うのです。

テクノロジーではなく、事業機会かJTBDは何か?

これは大学系にも多いですが、技術(時に手段)の話をする傾向があります。JTBD(顧客の本質的に成し遂げたいことはなんなのか?)の話ではなく、その一部に対しての手段の話をしているケースです。これも比較的日本に特有の部分があります。

まず、技術イノベーションと事業イノベーションを分けて考えたいところです。技術の話ではなく、そこは逆に優位性だけで良いかと、本来は顧客は何に困っていて、それを解決するのはこれだというシンプルな話が良いと思えます。先に書いた「ビジネスモデル」の部分にJTBDを考慮して話すイメージです。

特にテック系の場合、それって、顧客の課題を解決するのか?と思うケースがあります。例えば、顧客が良い睡眠を取れないとします。この原因は、職場のストレス、寝具、など沢山あるわけですが、それを睡眠の深さだけをICT的に測るという話で終わっているケースですね。

もっともっとシンプルに課題とその解決方法を

あれもこれも、というのもありますし、掲げた課題に対して、お?そのソリューションで解決できるのか?と思うことがあります。これは、設定した課題と解決がそもそも合っていない、時間軸で合っていないというのが考えられます。

例えば、日本に来る外国人に日本語ばかりでわかりづらいという社会課題があるとします。確かに、ふむふむと共感は生みやすいかも知れません。これに対して、滋賀の草津に英語の観光案内所を創るという話だったとします。こうすると、む?なでそれで最初の課題が?となります。では、フランチャイズシステムで全国展開するための試験を、まずは、これこれこういう理由でここで始める価値があると言われれば、確かにとなりますが。

つまり、課題と解決方法の間に納得感がないわけです。確かに、色々できることはあるのかも知れませんが、あれもこれも(解決)できるというのは、何もできないと言っているのと同じですし、もっともっと、シンプルにこの課題に対して、1対1で対応する解決方法の話が良いかと思えます。その後の構想は、最初の世界観で語るか、今後のビジネスの方向性で語ればよいかと思えます。

例えば、こんなどでかい世界の変化を創りたい⇒各論(シンプルに!)⇒各論の発展で最初の世界観というストーリーではいかがでしょうか。

後は話がずれますが、それを「なぜ貴方がやるのか?」が欲しいです。いや、思い付いたから!(が殆どでしょうが)、要は、ピボットの方向性です。例えば、大手企業の社内事業プランが典型ですが、自社プロダクトやサービスから入る(本人のやりたいことや会社のビジョンの深掘りがない)。一般的に殆どの事業は初動は失敗しますので、失敗すると、ピボットの方向性がわからないので、フリーズするケースです。この時に「本質的に何故私がこれをやるのか?」が深ぼってあれば、手段であるビジネスモデルはいかようにもピボットすれば良いわけです。

長くなりましたが、このような点を色々考慮されると良いかと思えます。もう一度、紹介しますが「藤野英人氏が語る、地方創生において重要な「遊び場・学び場・働き場」と「3種の虎」とは」考え方によっては地域の方が大型の事業を創れる可能性が高い。実際に事例もあります。今一度、視点、視座を変えてみるのも良いのではないかと思います。

イノヴェイションとは狙ってできるものではなく、世界の片隅でひっそりと、目立たない形で誰かが研究していることが、そうした大発見の元になると思うのです。そして、それをほかの誰かが見つけて広める、ということがほとんどでしょう。蔵本由紀

そして、そこで重要なのが「新結合」です。これは、またの機会にまとめたいと思います。ありがとうございました。

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