「ベンチャー投資に見る日本と中国の圧倒的な違い」というブログが注目されておりました。例えば、ビジネス向けのChatの比較がありますが、Slackの投資受け入れは約600億円ぐらい。日本のChatworkは約15億円です。15億円は日本で考えれば随分大きな額です。一方でSlackの額はかなりのものですね。
米国の人件費の高騰、貧富の差の拡大などの社会問題は大きいですし、中国の貧富の差も大きいです。日本の格差も開いているのでしょうが、世界的にみれば小さいともいえますね。なので、社会問題という観点から見たら別の見方もあるでしょうが、問題はこれだけの投資が「破壊的イノベーション」に入ったらどうなるか?という点かと思います。
米中日のGDPの比較
単純に言って、名目で米国は日本の4.5倍、中国は2.7倍、実質で3倍、1.1倍です(実質と名目の違いはこちら)。いずれにしろ、最大で4.5倍という差です。
世界全体のベンチャーへの投資額
15兆円という記載があります。2015年度の日本の投資の総額は1300億円ぐらいです。2016年の米国が約7.2兆円(1ドル=100円の場合)なのでその差はかなりのものです。中国は370億ドルなので米国の半分強ですね。
もちろん、バブルであるとか、そういう見方もある(シードへの投資は減っているという見方もありますが)のですが、いずれにしろ日本は非常に小さいということです。対GDP比では米国の1/15とか1/20とかそんなイメージです。
企業の研究開発費はどうなのか
企業部門の研究開発費は日本は決して低くありません。米国が1.5-2%に対し、日本は2-2.5%です。但し、研究開発の効率の悪さも含めて経産省が色々まとめています。
起業活動と起業家の地位と日本の起業
起業活動率に関して世界でも低いという話は良く出てきます。総合起業活動指数(Total Early- Stage Entrepreneurial Activity: TEA)で測られますが、成人人口 100名毎の懐妊期+誕生期の起業家の合計ですが、簡単にいえば3.5年以内の起業家の率ですね。これがGDPとの相関もあると言われれいるところです。
日本における起業家の地位は高いとはいえない(世界でも低い日本の起業家の地位)ので、簡単にいえば・・
という感じですね。いつまでも経済が伸びる未来が良いわけでもないでしょうし、個人的には日本が起業しにくいとも思えないです(人にもよるが、起業した方がお得な事を多くの人は知らない)。
何を言いたいかというと大勝ちはしないかも知れないが、海外事業を行う程度の投資資金を創ることは可能ということかと思います。
問題は「選手」が少ないこと
起業をしている人よりも周りで見ている人が多い
ある時、起業を目指している人がこう言ってました。とあるワークショップで起業を目指す人よりも支援や関係者の数の方が多いというのです。実質これは問題ですね。プレーヤーが少ないということですね。
起業家の数が少ないので手厚いサポートが受けられる
という逆張りの発想もあります。私もこんな感じで偉そうにブログを書いたりしてますが、まぁ、米国西海岸でも行ったらアクセラレーターなんて物凄い数ありますし、One of Them どころか None of Them ですね。原子かいいとこ陽子ぐらいです。
イノベーションのジレンマに完全に嵌っていないか
良いとか悪いとかの議論はともかく、米国企業の時価総額が日本のそれよりも圧倒的に大きいことは様々なメディアでも報じられております(こちらのSlide4も参照)。実力がどうのというよりは時価総額は「今後が期待されているか否か」だと思いますので、日本企業への世界の期待は薄いという感じは理解せねばなりませぬ。累積戦略や技術が強いのはわかりますが、それだけでは勝てないということですね。
中身も重要かも知れないが「どう思われている」かも同じか、それ以上に重要
クリステンセンのイノベーションのジレンマは有名ですね。ここで重要なポイントは、
つまり、大組織で真面目にやっているし、相当のイノベーション(但し、持続型につながるもの)活動も行っているが「破壊的イノベーション」は「真面目にやっているほど」難しいということです。
上記を総合すると「破壊的イノベーション」に強大な投資が集まっている米中があります。問題は「今までならあり得ない」ような技術やサービス、ビジネスに物凄い額のお金が付くということですね。そうすることで、あり得ない市場ができあがるということでしょう。Amazon、Uberしかり、Googleだって相当なものです。
世界には日本という国しかないのではなく、世界は別に存在し、持続型のイノベーションに多大な投資を続けている状況で、破壊的イノベーションには極めて乏しいヒト・モノ・カネの投資という状態が日本であると思います。
特にスケール型の起業で勝てる人は限られており、必ずしも勧められないのも事実です。しかしながら、この現状の前には今こそ、自分たちの「今」に疑問を持ち、自分を再発明する「起業」を通じて、新しい日本を再発明する必要性に我々は迫られているのではないでしょうか。